お金を使うのは何よりも難しい


ワールドカップの熱戦もいよいよ今夜決勝戦ということで最大の佳境を迎えているわけですが、このシーズンはヨーロッパのサッカーはオフシーズンということで、毎年多くの移籍情報がニュースを賑わせます。

今年のニュースの目玉には日本も含まれています。アンドリュー・イニエスタ、フェルナンド・トーレスというスペイン代表でも大活躍したスーパースターが二人もJリーグのチームに移籍することになりました。

近年は中東や中国、そしてアメリカがサッカー選手のいわばセカンドキャリアとして人気でしたが、ここにきて日本というのもその候補地になってきているのかもしれません。

巨額の投資に不満も

それと同じように大きな移籍となったのが、レアルマドリードの中心選手であり、これまた世界トップレベルのプレイヤーであるポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウドの移籍です。イタリアのセリエAの名門チームであるユベントスが獲得することになりました。

移籍金1億ユーロ(約130億円)にもなり、年俸は3000万ユーロ(約39億円)にもなるそうです。

イタリアではちょっと問題にもなっているそうで、そんな金を使っていいのか!と一般労働者の間では不満もあるそうです。親会社のフィアット社の労働組合はストライキを宣言し、座り込みや抗議活動を行っていると報じられています。

サッカーの巨額出資といえば、以前はチェルシーのアブラモヴィッチ氏が豊富なオイルマネーで次々とスター選手を獲得したというニュースが世間を賑わせました。しかし基本的には個人の資産でどうこうではなく会社の出資でなりたっている運営でもありますから、こういった不満があがる気持ちもわからないでもないですね。

巨額投資はアリかナシか

ちなみに日本では、イニエスタ獲得のヴィッセル神戸、親会社は楽天です。一時期はメインスポンサーがいない状態で神戸市などから融資を受けつつ運営をしていたヴィッセル神戸でしたが、2004年に楽天が経営権を握り、立て直しを図りました。

フェルナンド・トーレス獲得のサガン鳥栖もまた、経営が苦しい時期が続きました。しかし2015年にスマートフォンゲーム大手であるCygamesがメインスポンサーになることで、急成長を遂げています。ヴィッセル神戸のようにチームの経営自体を飲み込んだわけではなく、あくまで地方のクラブチームとして存在しています。社長の手腕といいますか、チーム運営もうまくいっているのかもしれません。

イタリアのように、じゃあ楽天やCygamesの社員が怒りや不満の声を上げているかというと、あまりそういう声は聞こえませんね。実際にどう思っているかはわかりませんけど。

正直なところ、会社経営としてどちらが正解なのかは、すべては結果論です。サッカーを例にした話ですが、これは音楽活動をはじめ、すべての社会活動にあてはまることでもあります。

きちんとした投資は周りを巻き込んで大きなリターンとなって戻ってきます。しかし日本人、とくにこの戦後の日本人は投資がきわめて苦手であり、抵抗感を持っています。

こういった大きな決断は難しい局面ではあり、会社経営というのはこの決断の繰り返しです。

それでもこういったかじ取りをしたのは、神戸、鳥栖の両チームだけでなく、まわりを巻き込んで大きな流れへと変わっていくことを願いたいです。この巨額投資が10年後、20年後に一つの成功例として語り継がれるようになれば、日本の経済はもっとよくなっているような気がします。