出版社、レコード会社、小売店、問屋が今でも必要な理由


電子書籍というのはとても便利で、日本で販売していない海外の本も読めますし、もう絶版になってしまって手に入らない本でも読むことができます。

本を出版するというのはとても大変なことで、そもそもある程度売れなければ増刷もされませんね。自費出版で本を出している人も多いですが、元を取るのもまったくの無名ですと難しいでしょう。

プリント・オン・デマンド

Amazonがやっているサービスにプリント・オン・デマンドというものがあります。

アマゾン、個人出版の市場拡大へ 注文受けて印刷・製本(朝日新聞デジタル) – Yahoo!ニュース

これはなかなか面白いサービスです。

Amazonが書籍のデータを持っていて、必要に応じて注文するとそれを印刷、製本し発送してくれます。この方法ですと、Amazonや出版する側も在庫を抱えるリスクもないですし、製本するのが大変な個人の作家さんでも比較的容易に本を売ることができます。

同人業界の賑わいもあるでしょうが、書籍のニーズ以上に個人出版のニーズが高まっています。印刷業界は影響を受けやすいところでもありますが、出版社や新聞社を対象としたサービスから個人ニーズへ目を向けることで生き残りにかけていますね。プリント・オン・デマンドは、まさに電子書籍と普通の書籍のいいところを取ったようなサービスで、いいなと思いました。

同じようなことをCDでもできるかもしれないですね。CDは書籍以上にフォーマットが整っていますし、むしろやりやすいような気も。どうしても在庫のリスクは作る側は怖いものですし、同人で音楽作る人たちもたくさんいますし、CD自体のニーズもないわけじゃないですからね。

出版社、レコード会社などの役割

世の中の流れは、いろんなものをショートカットする方向へ進んでいます。

なんだかんだで、世の中は商品を作る側と受け取る側の二者がいれば成り立ってしまうわけです。

これは書籍や音楽だけに言えることだけではありません。今はネットで農家が直接消費者やレストランに野菜を売ることができます。最近新しいiPhoneが発売されましたが、ソフトバンクやドコモと契約している人はそちらから買う人もいるでしょうが、APPLEから直接買う人も多いはずです。間にあるものをどんどんショートカットしています。同じように企業も直販できるところが増えています。

そうなってしまったら、じゃあ間にある出版社やレコード会社、さらには小売店、問屋などはもうなくなってしまうのでしょうか?

これまでは作る側、受け取る側の間に多くの役割が必要でしたが、そうじゃなくなる以上、出版社やレコード会社は自分たちの役割をきちんと把握し、自分たちにしかできない仕事をしなくてはなりません。ただたんに、モノを右から左へ動かすだけの仕事は成り立たなくなるでしょう。ですが少なくとも今はまだ出版社やレコード会社の意味がない、とまでは言いません。小売店や問屋もそうです。そこには、そこじゃないとできない仕事があるのです。それは価値を見出し、価値を付加するということです。これもまたとても大事な仕事なのです。

例を挙げると、出版社は作家さんの作品をよりいいものにするために一緒に制作に参加しますし、それを売り込むための営業や宣伝をします。スーパーはよりいい野菜や魚を見極めて仕入れ、それをお客さんへ直接、わかりやすく売ります。出版社は原作を作りませんし、スーパーは野菜を作りません。どれだけネットが発達しても、それでもなくならない理由はこういったところにあるでしょう。

ビジネスの仕組みが変わる、というか選択肢が増えたこの時代だからこそ、より面白いものがたくさん生まれそうな気がしています。背景にはそのモノだけではなく、価値をどうとらえるかというところに鍵がありそうですね。