これはスタエフの文字起こしをブログ化したものです
こんにちは。もうすぐワールドカップが始まりますね!
今日は、スポーツの放送に関する非常に興味深く、また考えさせられるニュースがありましたので、ご紹介したいと思います。
DAZNがワールドカップを独占配信「しない」理由
今回、ワールドカップの日本での放映権(配信権)を獲得しているのは「DAZN(ダゾーン)」です。
しかし、DAZNはその権利を「完全独占」するのではなく、民放(地上波)などの無料放送でも試合が見られるようにサブライセンス(放映権の切り売り・共有)を認める方針をとりました。これが今、話題になっています。
この話題で必ず引き合いに出されるのが、少し前の「WBC(または他のスポーツの国際大会等)」の件です。
以前、ある国際大会の放映権をNetflix(あるいはAmazonプライムビデオなどの米系プラットフォーム)が獲得し、地上波のテレビ局には一切権利を降ろさず「完全独占配信」にしたことがありました。
これに対しては、「地上波で見られないから全然盛り上がらなかった!」という批判がある一方で、「本当に野球(スポーツ)が好きなら、お金を払ってそのサービスに加入すればいいだけの話だ(資本主義なのだから当然だ)」という声もあり、様々な意見が飛び交いました。
ヨーロッパ特有の考え方「ユニバーサルアクセス権」
なぜ、同じように高いお金を払って放映権を買ったのに、Netflix(アメリカ企業)は完全独占し、DAZN(イギリス発祥の企業)は地上波にも放送させたのでしょうか。
DAZNの日本法人の社長もインタビューで様々な理由(ビジネス戦略や普及への思いなど)を語っていましたが、私はその根底に、イギリス(ヨーロッパ)企業ならではの「ユニバーサルアクセス権」という考え方が強く影響しているのではないかと思っています。
「ユニバーサルアクセス権」とは、以前のPodcastでも少しお話ししましたが、簡単に言うと「サッカーのワールドカップやオリンピックなど、国民の関心が極めて高い重要なスポーツ・文化イベントは、国民全員が無料(あるいは容易に)見ることができるよう、放送事業者は努力・配慮しなければならない」というヨーロッパ特有の考え方や法律のことです。
「せっかく大金を払って権利を買ったのに、タダで見させなきゃいけないなんて理不尽だ!」と資本主義の視点からは思うかもしれません。しかしヨーロッパでは、「国民的スポーツはもはや一企業のものではなく、国民全体の財産(インフラ)である」という認識が強いのです。
今回のDAZNの対応は、まさにこの「ユニバーサルアクセス権」の精神に則ったものだと言っていいでしょう。
「日本代表の重要な試合は、DAZNに加入していない人でも地上波で見られるようにしますよ。みんなでワールドカップを楽しみましょう。でも、もっと深く、全試合を楽しみたい人はDAZNに入ってね」という、非常にバランスの取れた素晴らしい落としどころだと思います。
アメリカとヨーロッパの「価値観の違い」
日本ではよく「欧米」とひと括りにしてしまいますが、アメリカとヨーロッパでは、ビジネスや文化に対する考え方が全く違うことがよくあります。
完全な資本主義・自由競争を重んじ、高いお金を出した者が独占するのが当たり前と考える「アメリカ(Netflixなど)」。
一方で、ビジネスの利益を追求しつつも、歴史ある文化やスポーツを「公共の財産」として守り、広く国民にアクセスさせることを重視する「ヨーロッパ(DAZNなど)」。
今回の放映権の対応の違いは、この両者の価値観の違いがとてもわかりやすく表れた事例だと思います。
私は個人的にDAZNに加入しているので、正直「独占でも見られるからいいや」という立場ではありますが(笑)、「DAZNに入っているのに無料でやるなんてズルい!」なんて野暮なことは思いません。国を挙げて盛り上がるスポーツは、やはり多くの人が見られる環境があるべきだと思うからです。
国が違えば、考え方もルールも違います。
「ユニバーサルアクセス権」という、日本やアメリカにはあまり馴染みのない価値観を知ることで、ニュースの裏側にある「企業文化の違い」が見えてくるのはとても面白いですよね。
今日は、DAZNのワールドカップ配信とユニバーサルアクセス権についてお話しさせていただきました。