ウォークマンは終わってしまう?時代の流れと企業マインドの話


これはスタエフの文字起こしをブログ化したものです

1979年にソニーから誕生した「ウォークマン」は、音楽を持ち歩くという新しい概念を生み出し、音楽ビジネスと私たちのライフスタイルに多大な影響を与えた歴史的なガジェットです。僕自身、京都の大学の授業でも音楽の歴史の大きな転換点として、ウォークマンについてかなりの時間を割いて解説しています。

そんなウォークマンに関する、ひとつの時代の終わりを予感させるニュースが飛び込んできました。現在国内で販売されているウォークマンの現行モデルが、すべて「出荷完了・在庫限り」になったというのです。

(※ファクトチェック補足:2026年7月末の報道等によると、ソニーの現行ウォークマン全モデルが出荷終了となり、家電量販店などでも売り場が縮小されていることが話題になっています。SNS等では「ウォークマンがついに終わりを迎えるのか」とファンがざわつく事態となりました。)

音楽デバイスの変遷と時代の流れ

これを聞いて「え、ついにウォークマンがなくなるの!?」と驚く声がある一方で、冷静に考えれば、僕たちの大半はもう何年も前から専用の音楽プレーヤーを持ち歩かなくなっています。

僕自身も大学生の頃からAppleのiPodを長く愛用していましたが、スマートフォン(iPhone)が登場してからは完全にそちらに移行しました。震災の頃(2011年)には、すでにiPodを持ち歩いていなかった記憶があります。おそらくこれを読んでくださっている皆さんも、現在進行形で毎日ウォークマンやiPodを持ち歩いている人はほとんどいないのではないでしょうか。

カセットテープからCDへ、そして2000年代以降のインターネットの普及によるデータ再生の時代へ。iPodとiTunes Storeのセットが「音楽をデータで買い、管理する」という枠組みを決定づけた時点で、専用プレーヤーの運命はある程度決まっていたと言えます。むしろ、2026年になる今日までソニーがウォークマンというブランドを維持し、新製品を出し続けてきたこと自体がすごいことなのです。

しがみつかず、次へ行くという企業のマインド

今回のニュースを受けて「ソニーは大丈夫なのか」と心配する記事も見かけましたが、企業にとって主力製品が変わっていくのは当然のことであり、全く問題ありません。

時代が変われば、求められる製品も変わります。ソニーがかつてテレビ(トリニトロンなど)で圧倒的なシェアを誇った後に構造改革を行ったように、主力製品にこだわりすぎず、次なる柱を模索していくのが企業の正しいあり方です。

モバイルバッテリーで大成功を収めているAnkerが、バッテリーだけに依存せず次々と新しいジャンルに挑戦しているのと同じです。成り立ちの製品に固執してはいけません。

その最も成功した例がAppleです。彼らは自社の大ヒット製品である「iPod」を、自分たちが作った「iPhone」によって自ら滅ぼしました。自らの成功体験すらも破壊して次へ進む。これこそが、変化の激しい時代を生き抜くために必要な「マインド」です。

ソニーは一時期、ウォークマンという過去の成功体験に少ししがみつきすぎてしまった時期があり、僕は授業でもスティーブ・ジョブズとの対比としてそれを「失敗」と位置づけて解説することがあります。しかし、ソニーの根底にあるクリエイティビティというマインドがキープされていれば、形はどうであれ時代に合わせてまた必ず伸びていきます。

ウォークマンの歴史がいよいよ幕を閉じる日は、そう遠くない未来にやってくるでしょう。しかし、それは決して悲しいことではなく、時代が前に進んだ証拠なのだと思います。