こんにちは。先日、立憲民主党に所属する(党員登録している)男性が、AIで生成した顔画像を使って架空の若い女性アカウントを作成し、あたかも実際に政治活動や立候補の準備をしているかのようにSNSで発信していたというニュースがありました。
架空アカウントによる政治発信の新しい手口
SNS上で、自分の本当の身元を隠して政治的な主張(いわゆる匿名アカウントや裏アカウント)をする人自体は珍しくありません。右であれ左であれ、特定の政党を応援したり、対抗勢力を批判したりするために匿名のアカウントを使うことはネットの常套手段です。
しかし今回の事件が非常に「新しい(そして悪質だ)」と感じたのは、ただの匿名支持者としてではなく、「政党の公式な看板(@立憲民主党)を背負い、あたかも実在する人物が選挙に立候補するために政治活動をしているかのように装った」という点です。
しかも、そのペルソナ(架空のキャラクター)の設定が非常に精巧かつ悪質でした。ただの若い女性というだけでなく、「性暴力の被害に遭い、そこから妊娠・出産を経験した」という重い当事者性を持たせていたのです。
当事者性を「捏造」することの悪質さ
なぜ中年の男性党員が、わざわざそんな設定の若い女性を演じたのでしょうか。
理由は明白で、同じ政治的主張(女性の社会進出や子供の問題など)をするにしても、中年男性が語るより、壮絶な体験を乗り越えてきた「若い女性当事者」が語る方が、世間の共感や同情を集めやすく、メッセージが圧倒的に刺さるからです。
女性問題や子育て支援が政治において非常に重要なテーマであることは間違いありません。しかし、そのテーマを世間に訴えかけるために「他人の痛ましい経験」をAIと創作エピソードで捏造し、自分たちの政党のアピール(世論誘導)に利用しようとしたことは、倫理的に極めて大きな問題があります。かつて、存在しない戦争体験をでっち上げて語った人が批判されたことがありましたが、構造としてはそれと全く同じです。
誰のための工作だったのか?
不思議なのは、「じゃあこの架空の女性が人気を集めたとして、実際の選挙で誰に投票させるつもりだったのか?」という点です。
架空の人物なので当然本人は出馬できません。「比例代表で党名を書いてください」と誘導するつもりだったのかもしれませんが、バレた時のリスク(党の信用失墜)が大きすぎます。結果的にアカウントは凍結(削除)され、この男性党員だけでなく立憲民主党全体のイメージにも大きなマイナスとなってしまいました。
SNSと選挙の関わりは昔から問題視されてきましたが、AIの進化によって「存在しない魅力的な政治家(候補者)」をいとも簡単に作り出せてしまう時代になりました。政治的インフルエンサーの多くが顔を出さずに活動している中で、情報の真偽や「その人は本当に実在するのか」を見極めるリテラシーが、僕たち有権者により一層求められる時代になったのだと痛感するニュースでした。