ここ最近、テック界隈やニュースで「本当にやるの?」と大きな話題になっていたトピックがあります。トランプ大統領による「AI(人工知能)をこれからは『SI(スーパーインテリジェンス)』と呼ぶようにしよう」という大統領令への署名です。
「呼び方を変えるだけの大統領令?」と聞くと、一見突拍子もない話のようにも思えますよね。世界中に定着するかどうかはまだ未知数ですが、実はこの背景にある意図を紐解いていくと、意外と一理あるアプローチだと感じられます。
今回は、なぜ今「AI」から「SI」へ名前を変えようとしているのか、その狙いと今後の展望について掘り下げてみます。
なぜ「AI」ではなく「SI」なのか?
狙いとしてまず挙げられるのが、「AIという言葉についてしまったネガティブなイメージの払拭」です。
アメリカとしても国策としてテクノロジーの推進を最重要視していますが、「AI」という言葉にはどうしても次のような印象が付きまとってしまっています。
- フェイクニュースやディープフェイク画像などの「フェイク(偽物・インチキ)」のイメージ
- 人間が「楽をしている」「ズルをして手抜きで作っている」という印象
AIの頭文字「A(Artificial=人工的な・模造の)」という響きそのものが、どこか「まがい物」のような印象を与えてしまう側面は否めません。国家として強力に後押ししていく基幹技術だからこそ、より前向きで力強い印象を与える言葉に変えたいという思惑が透けて見えます。
黎明期と現在では技術の次元が違う
もうひとつの理由は、テクノロジーの進化スピードと実態の乖離です。
生成AIが急速に注目され始めた2022〜2023年頃のモデルは、確かに画期的ではあったものの、今振り返れば荒削りでポンコツな部分も多くありました。
しかし、その後の進化は凄まじく、かつてのモデルと現在の最先端モデルを同じ「AI」という一言で括ってしまうこと自体に違和感が生まれつつあります。中身がまったくの別次元に進化しているのに、昔の未成熟なイメージや「フェイク」の先入観を引きずったままでは正当な評価がされにくくなります。
「名前を変えて印象を一新する」というのは、ブランディングの観点からも非常に強力な手法です。AGI(汎用人工知能)やその先を見据えたとき、このタイミングで「SI(Super Intelligence=超知能)」へとリブランディングを図る動きは、あながち的外れとは言えません。
本当に「SI」という呼び方は定着するのか?
とはいえ、すでに世界中で完全に定着している「AI」という巨大なワードを、本当に「SI」へと塗り替えることができるのでしょうか。
米中首脳の対話でも話題に上ったと言われていますが、もし米中をはじめとする大国が公の場で本格的に「SI」を使い始めれば、日本を含む世界中がおのずと追従していくシナリオも十分に考えられます。
もちろん、多くのメディアや個人の情報発信では、当面は親しみのある「AI」という言葉が主流であり続けるでしょう。ですが「たかが名前、されど名前」であり、言葉が変われば人々の意識やテクノロジーへの向き合い方も確実に変わっていきます。
今回の動きは、単なる言葉の言い換えにとどまらず、知能技術が次のフェーズへ突入したことを象徴する出来事になるかもしれません。公的機関やテック企業が今後この呼び名にどう反応していくのか、これからの言葉の行方にぜひ注目してみてください。