これはスタエフの文字起こしをブログ化したものです

こんにちは。今回は、クラウドサービスの巨人であるAmazon Web Services(AWS)に関して、非常にショッキングかつ現代のインフラの脆弱性を考えさせられるニュースがありましたので、お話ししたいと思います。

(※ファクトチェック補足:2026年3月に中東のアラブ首長国連邦(UAE)とバーレーンにあるAWSのデータセンターがイランによるドローン攻撃などの物理的な被害を受けました。その後、半年間にわたる復旧作業が続けられていましたが、同年9月にAWSは「物理的な損傷が激しく、一部の顧客データやリソースは完全に永久消失し、復旧不可能である」と正式に発表しました。バーレーンではリージョン全域、UAEでは一部の可用性ゾーン(AZ)が回復不能の被害を受けました。)

「クラウドは絶対に消えない」という神話の崩壊

AWSといえば、世界中の名だたる大企業からスタートアップ、さらには政府機関までもが利用している、インターネットの土台とも言える絶対的なインフラです。

普通、AWSのような世界トップクラスのクラウドサービスを利用していれば、「データは複数のサーバーに分散して保存され、強固なバックアップ体制が敷かれているから、絶対にデータが消えることはない」と僕たち一般ユーザーも企業も信じて疑いません。実際に、システムのバグや一時的な障害でアクセスできなくなることはあっても、データそのものが「永久に消えて復旧不可」になる事態など、これまでのAWSの歴史の中でも前代未聞の出来事だと思います。

しかし今回、バーレーンとUAEのデータセンターにおいて、一部の顧客データが完全に消え去ってしまいました。その原因がシステムエラーではなく、「戦争(ドローンによる物理的な直接攻撃)」だったのです。

物理的破壊という究極の脅威

インターネットというネットワーク自体は、一部の経路が破壊されても別の経路を迂回して通信を維持できる「分散型」の強靭なシステムとして設計されています。しかし、データが保存されている最終的な場所は、どこかの土地に建っている「物理的なデータセンター(ハードディスク)」です。

どんなに高度な暗号化を施し、クラウド上でデータを分散させていても、そのデータが保存されている建物ごとミサイルやドローンで物理的に破壊され、燃やされてしまえば、データは消滅します。もしその企業のバックアップシステムが「同じ中東リージョンの中だけ」で完結していた場合、今回のように一網打尽にされてしまうわけです。

マルチリージョン設計の重要性

今回の件は、現代の地政学的リスク(戦争やテロ)、そして巨大地震などの未曾有の自然災害の前では、いかにAWSといえども「物理的な破壊」からデータを完全に守り切ることは難しいという現実を突きつけました。

もちろん、AWS側もこれまで以上に施設の堅牢化や防衛策を講じていくでしょうが、それ以上にサービスを利用する企業側の意識改革が求められます。「クラウドに置いているから安心」ではなく、攻撃されてデータセンターが物理的に消滅することを前提に、遠く離れた別の国や大陸(別リージョン)にもデータをバックアップ・分散させる「マルチリージョン」の設計が、これからのデジタルインフラには必須になっていくのだと思います。

戦争という物理的な暴力が、デジタル空間のクラウドデータまでをも完全に破壊してしまう。現代の戦争の恐ろしさと、デジタル社会の脆弱性を改めて実感させられる、非常に衝撃的なニュースでした。