キリンがAI役員を導入へ、AIは経営や政治に役に立つか


これはスタエフの文字起こしをブログ化したものです。

キリンホールディングスが、経営層の意思決定を支える「AI役員」を本格導入するという、非常に未来的なニュースが飛び込んできました。このAIは「コアメイト」と名付けられ、経営の右腕としての役割を担うとのこと。にわかには信じがたい話ですが、その仕組みを知れば、これが決してSFの世界の話ではないことが分かります。

12人のAI人格が議論する「コアメイト」

この「コアメイト」が面白いのは、単一のAIが答えを出すのではない、という点です。コアメイトの内部には、過去10年分の取締役会の議事録や社内外の膨大なデータを学習した、キリン独自の「12人のAI人格」が構築されているそうです。そして、この12人のAI人格同士が、まるで人間のように議論を交わし、そこから抽出された複数の論点や意見を、最終的に人間の経営層に提示するというのです。

この話を聞いて、僕の頭に浮かんだのは、人気アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に登場するスーパーコンピュータ「マギシステム」でした。

もしかしたらこの12人のAI人格にも、それぞれ異なる役割や価値観が設定されているのでしょう。例えば、会社の利益を最優先に考えるAI、最高のユーザー体験を追求するAI、社員の幸福を第一に考えるAI…といった具合に。多様な視点を持つAIたちが議論を戦わせることで、人間だけでは思いつかなかったような、斬新なアイデアや論点が生まれるのかもしれません。

AIに経営は任せられない?それは誤解だ

「AIに経営戦略なんて任せて大丈夫か」「AIは責任を取れないじゃないか」といった批判的な声も、きっと出てくるでしょう。しかし、それは大きな誤解です。今回の取り組みは、AIに経営の全てを委ねるという極端な話ではありません。あくまで、最終的な意思決定を下すのは人間です。AI役員の役割は、その判断材料となるアイデアの「引き出し」を、飛躍的に増やすことにあるのです。

むしろ僕は、こうしたAIの活用は、他の企業、あるいは政治の世界でも積極的に取り入れるべきだと考えています。

AI最大の強みは「忖度しない」こと

AIが持つ最大の強み、それは「忖度をしない」ことです。

人間の組織には、残念ながら社内政治や派閥といったものが存在しがちです。「あの派閥に配慮して、この案は出さないでおこう」といった力学が働き、本当に会社のためになる最適な選択ができない、というケースは少なくありません。

しかし、AIにはそうした忖度の一切がありません。社内の人間関係や力関係などお構いなしに、データに基づいた最も合理的でフラットな意見を提示してくれます。これは、組織の意思決定において、非常に大きなメリットとなるはずです。

OpenAIのサム・アルトマンCEOは、「早ければ2025年末には、AIが普通に皆さんと一緒に仕事をするようになる」と予測していましたが、キリンのこの取り組みは、まさにその未来が現実のものとなりつつあることを示す象徴的な出来事だと言えるでしょう。

AIが人間の仕事を奪うのではなく、人間がより良い判断を下すための強力なパートナーとなる。そんな新しい時代が、もうすぐそこまで来ています。今後、こうしたニュースはますます増えていくはず。この変化の波を、僕も積極的に追いかけていきたいと思います。