給与デジタル払いへの賛否と、国の本当の狙いを考える


キャッシュレス政策もなんだかんだでうまくいっている面もあり、この1年でコンビニなどでキャッシュレスで支払いをする人が増えた印象があります。

そんな中、給料をデジタル払いするという制度が整いつつあります。

給料のデジタル払いができないルール

給料にはいくつかルールがあります。

法律には、賃金支払いの五原則なるものが存在します。

こちらの厚労省のサイトには、こうあります。

賃金については、労働基準法第24条において、(1)通貨で、(2)直接労働者に、(3)全額を、(4)毎月1回以上、(5)一定の期日を定めて支払わなければならないと規定されています(賃金支払の五原則)。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyungyosei05.html#:~:text=%E8%B3%83%E9%87%91%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%AF%E3%80%81%E5%8A%B4%E5%83%8D%E5%9F%BA%E6%BA%96,%E8%B3%83%E9%87%91%E6%94%AF%E6%89%95%E3%81%AE%E4%BA%94%E5%8E%9F%E5%89%87%EF%BC%89%E3%80%82

ただ、重要なポイントは、通貨であるというところです。現在の法律では、電子マネーで給料を払うことはできません。しかし銀行口座で支払うことはできます。

ここにも法で定められています。労働基準法には「当該労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金又は貯金への振込み」とあります。

今回の法改正はここの拡大かと思われます。

ちなみについ先日、ソフトバンクが社員にPayPayにボーナスを配りましたが、それは給料ではないという位置づけなのかなと思います。自社サービスを使ってもらい活性化させたい狙いもあるでしょうが、こういった形で社員に電子マネーでお金を配ることにより、給与支払いのデジタル化を国にアピールしたい狙いもあったのかもしれません。

デジタル払いのデメリット

電子マネーでの給料支払いについては、嫌だと感じる人も少なくないでしょう。

デメリットもいくつかあります。

まずは銀行の利子がつかないこと。電子マネーにお金を入れていても、1円も増えません。しかし銀行ならば利子がつきます。いずれ口座維持料のような形でお金を徴収する形になるかもしれませんが、こういう形で電子マネーがライバルになってしまった以上、口座維持でお金を徴収するのは難しくなりそうですね。

もう一つは、支払いできる場所がまだ少ないことです。家賃などもそのうち電子マネーで支払いができるようになるのでしょうが、まだ少数派です。双方が同じ電子マネーを利用する必要があり、そういった意味では銀行振込は汎用性が高いですね。これについては、将来的に電子マネーで銀行振込ができるようになれば解決です。

実はあまり話題になってないですが、LINE Payはすでにこれができます。給料デジタル払いの法整備が進めば、各社対応させてくるでしょう。

あとは、破綻した時の対応です。実は銀行と電子マネーはパッと見はなんかやっていることは似ていますが、破綻に関するルールが異なります。銀行の場合は、破綻すると1000万円は問答無用で預金保険制度の適応により、預金者に戻されます。電子マネーなどを扱う業者は資金移動業者という扱いになります。実はこちらの場合は、全額戻ってきます。全額戻せるように、常にお金を預けている状態にしないといけないルールがあるからです。しかしそれが即金で戻ってくるかわからないというところが、難しいところです。

本当の狙い

一方でメリットもあります。

まず企業側は、銀行の振込手数料を節約することができます。たかが数百人分じゃないかと思われそうですが、チリツモです。

ユーザーとしてはチャージしなくていいというメリットもありますが、チャージする操作はそれほど煩雑でもなく、そこまでメリットはないかもしれません。

実はこの背景には、国が進めようとしている副業政策にも関係しているのではないかと思っています。

現在、週休3日制度を進める動きが活発化しています。

「選択的週休3日制」対応検討 自民党内の中間提言ふまえ(フジテレビ系(FNN)) – Yahoo!ニュース

休みが増えることで趣味や家庭に時間を割くこともできますが、同様に副業についても時間をあてることができます。

企業としては給料を減らすことができ、個人としては他で仕事をしスキルアップできるという、一石二鳥のシステムです。

副業推進には賛否あるでしょうが、今の時代感としてはやむなしです。企業の体力も減り、欧米の個人主義も進み、リモート化など仕事の効率化や、成果性の報酬スタイルへの注目が高まっています。

実はこの副業制度、場合によっては報酬が300円、500円といった定額でも、支払いをしなくてはなりません。銀行振込が義務化ですと、定額の報酬とは相性が悪いんですよね。そのため、ある一定のラインを越えなければ報酬は支払われない、とルール化しているサービスもあります。

こういった報酬を送金手数料が安い、もしくはかからない電子マネーで支払いができるようになると、副業関連のサービスもさらに充実することになるでしょう。

早ければ今年度中にも最終決定がでそうな、給料デジタル払い解禁。個人的には仕事の幅も広がる可能性もあるということで、注目している分野です。