長年議論されていた、というか議論が止まっていた国民投票法改正について、与野党合意の上、ようやくまとまりました。
おそらく大半の人が興味ない内容だとは思いますが、ネットをチラチラ見ていると相変わらずトンチンカンな意見も多いのが気になりました。
興味ない人がそういったトンチンカンな意見に誘導されてはいけませんので、ここできちんと説明したいなと思います。
国民投票法とはなにか
日本国憲法は改正する方法は、一つだけあります。国会議員の三分の二が賛成した上で、国民投票で過半数取ることです。
しかし、どういうわけか日本には国民投票をするためのルールが存在しませんでした。
つまり、日本は今のままでは憲法を変えることは不可能なわけです。
そこで、まずは国民投票をするルールを決めようということで生まれたのが、国民投票法です。正確には「日本国憲法の改正手続に関する法律」という名前で、2007年に成立しました。
ですが、この法律はまだまだ甘いところがありまして、それを少しずつ修正しながら整えていこう、ということでの今回の改正案となったわけです。
ちなみにこれが改正されたから憲法が改正されるわけではありません。改正されなかったら憲法が改正されないわけでもありません。
今回、どこを変えたのか
それでは今回、どこを変えたのでしょうか。
変えたポイントはいくつかありますが、投票に関してもっとやりやすくなるように変わりました。
例えばショッピングセンターや駅でも投票が可能になります。一つの地区で一つの場所が空いている時間が長くなり、幅広い時間での投票が可能になりました。
また、期日前投票についても、その理由に天候が加わるようになりました。つまり投票日は大雪の予報だから先に投票したいなぁ、というのも、今まではダメだったんですが、それがOKになりました。
その他にも、海外で暮らす人が投票しやすくなったり、船の上でも投票しやすくなるように改正されました。他にもいくつかありますが、どれもより便利になるものです。
これだけ見たらどう考えてもプラスなんですが、東京新聞はこう書いています。
改正案は利便性の向上ではなく、投票の環境の悪化を招くとの懸念も根強い。駅や商業施設などに「共通投票所」が導入されれば、各地の投票所が集約され、移動手段が限られる高齢者らは逆に足を運びにくくなる可能性もある。期日前投票所の開始時刻の繰り下げや、終了時刻の繰り上げといった弾力的な運用も認められており、民意を示す機会が制限されかねない。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/102627
まぁたしかに、この法案だと幅広く投票所が設置されることになりますが、ピンポイントで言えば、どこかの場所は早く投票所が閉められる可能性もある可能性はあります。
しかしそれを「投票の環境の悪化を招く」と振り切るのはどうかなというところなのですが、こういうところに東京新聞らしさを感じます。報道機関にそれぞれ色があることはアリだと思っています。
今回の法改正については、立憲民主党も賛成しています。
立憲民主党はCMについての規制をするべきと主張し、それをそのまま採用することで賛成に回りました。
これは金のあるところがCMなどをバンバン打ち世論を動かすことを懸念したものです。まぁそりゃそうだってところですね。
ただCMについては、三年をめどにこのあたりを調整する、ということで落ち着いています。逆にいえば、三年間は引き延ばしができる、という見方もあるということで、この解釈についてはどっちともとれる曖昧なところでの賛成になっているわけです。
現在ある問題点
現在ある問題点は、最低投票率についての記載がないことです。
1億2000万人の人口がいるとして、まぁ子供がいるとはいえ便宜上いないとすると、6000万人を越えれば過半数です。
ですが例えば投票率1%だったとすると、有効票は120万票です。60万票を越えれば過半数を取ったことになります。
1億2000万人もいるのに、60万人の賛成で過半数がとれてしまうなんて、それってどうなのという話です。
護憲派の人はとにかく改憲されることを阻止することが目的ですから、次の焦点は間違いなくここになるでしょう。
ちなみに日本の選挙でもこういったルールはありますから、こういうのもどこかでラインを決めることは必要かもしれません。
そんなことよりコロナを…と絶対に言ってはいけない
今回、そんなことよりコロナをどうにかしろよ、という意見が多くみられました。
しかしこれは典型的なストローマン論法の一つで、いわゆる論点外しです。
たしかにコロナもどうにかしてほしいですが、それはそれ、これはこれです。
この改正案の議論については、それこそコロナ以前より議題として存在していました。野党はのらりくらりと議論を前に進めなかったことがなによりの問題です。「そんなことより」と言っている人こそ、この問題については野党を批判すべきです。
次のテーマは憲法改正
コロナのこともあり棚上げ状態になっていますが、次のテーマはこの憲法改正であることは変わりありません。
しかしこの憲法改正、そしてそもそも日本国憲法について、どんなことが書いてあるのか知らない人も多いと思います。
いずれ、めちゃわかりやすい日本国憲法解説をしたいなと思っています。