これはスタエフの文字起こしをブログ化したものです
去年(2025年頃)から、いよいよ日本でも「デジタル給与払い」という制度がスタートしました。このPodcastでも何度か取り上げてきましたが、皆さんの周りでは導入されていますか?
私は個人で仕事(請求案件)を受けることが多いのですが、「支払い側がデジタル給与(PayPayなど)に対応しているなら、ワンチャンそれで払ってもらってもいいかな」と思うこともあります。日常的にPayPayを使っているので、請求書のうちの1枚分くらいならPayPayで振り込まれても特に困りません。
ただ、今まで取引先から「デジタル給与払いで払います」と言われたことは一度もなく、普通に銀行振込で入ってきます。
デジタル給与払いが進まない「圧倒的な理由」
最近、「デジタル給与払いが全然進んでいない」というニュースがありました。
まあ、そりゃそうだよね、というのが私の率直な感想です。
普通の会社員の方を想像してみてください。
毎月決まった額のお給料が入ってくるとして、その全額をPayPayに入れられても困りますよね。(※制度上は全額ではなく、一部の金額を指定してPayPayなどの口座に振り込むことが可能です。)
「だったら、今まで通り全額を銀行口座に振り込んでもらって、自分の必要な分だけPayPayにチャージするか、クレジットカードを紐付けて使えばいいじゃん」と思うのが普通です。そちらの方がお金の管理もしやすいし、安心ですからね。
デジタル給与払いが進まない最大の理由は、「労働者側にとって明確なメリットがない」という一点に尽きます。
「デジタル給与払いにしたら給料が少し増えますよ」とか、「PayPayの還元率が10%になりますよ!」とかなら、「じゃあPayPayで受け取ろうかな」と思う人もいるかもしれません。
しかし、給料の額面が増えるわけでもなく、PayPayの還元率もクレジットカードと比べてそこまで大きな差があるわけではありません。むしろクレジットカードを使うためには銀行口座にお金が入っていなければならないので、「キャッシュレスを使うために、むしろ銀行口座にお金を入れておいた方が便利」というロジックにすらなってしまいます。
国が進めたいなら「補助金」が必要では?
このニュースを見て、「日本はキャッシュレスが遅れている」と批判するのは少し違う気がします。「メリットが提示されていないから普及しないだけ」の話です。
デジタル給与払いはあくまで「民間」のサービス(PayPayなど)を利用するものですから、国が「もっとメリットをつけろ!」と企業に命令するわけにはいきません。だから現状のような「やってもいいけど、特にうまみはない」という中途半端な状態になってしまうのでしょう。
(ダイソーなどが従業員向けにデジタル給与払いに対応したというニュースもありましたが、これも会社側・従業員側双方にどれほどの劇的なメリットがあるのかはまだ未知数です。)
将来的に、日本国が「デジタル日本円(CBDC:中央銀行デジタル通貨)」を発行するようになれば、国が主導して「デジタル円で受け取ればポイント還元します」といった政策も打てるかもしれません。しかし、CBDCの導入は社会の根幹に関わる問題なので、また別の機会にお話しすべき大きなテーマですね。
もし国が本気でキャッシュレス(ひいてはデジタル給与)を普及させたいのであれば、個人にメリットを提示するか、あるいはお店側の負担を減らす政策を打つべきだと思います。
例えば、以前もラーメン屋の券売機の話をしましたが、「キャッシュレス決済を導入する店舗に対して、国が決済端末の導入費用を全額(または一部)補助する」とか、「毎月の決済手数料のうち、月1〜2万円分くらいを国が負担してあげる(補助金を出す)」といった直接的な支援です。
お店側が「手数料が高いからキャッシュレスは入れたくない」と渋っている現状を打開しない限り、いくら給料をデジタルで払っても使う場所が広がっていきません。
民間ができることはやり尽くした
PayPayをはじめとする民間企業は、莫大なキャンペーン費用を投じてキャッシュレスの普及に努め、もう「やれることは大体やり尽くした」感があります。
ここから先、さらにキャッシュレスやデジタル給与を社会の隅々まで浸透させるためには、国の本気度(補助金や明確なメリットの提示)が問われていると思います。
「デジタル給与払い」という制度・選択肢ができたこと自体は良いことですが、普及にはまだまだ時間がかかりそうですね。
皆さんはもし会社から「PayPayで給料を払いますか?」と聞かれたら、利用してみたいですか?
今日は、デジタル給与払いの普及の壁と、キャッシュレス社会の課題についてお話しさせていただきました。