これはスタエフの文字起こしをブログ化したものです。
最近、音楽業界では楽曲の長さが短くなっているという傾向が話題になっています。かつては4,5分前後が一般的だった楽曲が、いまや2分台へと短縮化が進んでいます。この現象の背景には何があるのでしょうか。時代とともに変化する音楽の形について考察します。
短くなる楽曲の歴史的変遷
音楽の長さの変化は、実は長い歴史を持っています。かつては1曲5分程度の長めの楽曲が主流でした。しかし90年代以降、徐々に短くなり始め、サビの冒頭配置(サビ始まり)などの工夫も増えてきました。2000年代に入ると3分台の楽曲が増加し、そして現在の2020年代では、さらに短い2分台の楽曲が増えているのです。
この変化は単なる偶然ではなく、私たちが音楽を聴く媒体や方法の変遷と密接に関連しています。CDの時代からストリーミングサービス、そして現在のTikTokのような短尺コンテンツプラットフォームへと、音楽を楽しむ場所が移り変わることで、楽曲そのものの形も変化しているのです。
90年代に流行した「サビ始まり」の楽曲も、当時のメディア環境に適応した結果でした。ラジオや音楽番組でより多くの人に聴いてもらうため、冒頭から聴き手を惹きつける工夫として広まったのです。現在の短尺化も、同様にメディア環境への適応と見ることができます。
クリエイターの視点:凝縮された音楽表現の魅力
音楽を制作する立場からすると、曲の長さに対する考え方はさまざまです。「無駄な繰り返しは一切削除したい」という思想で、必要な要素だけを凝縮した短い楽曲を好むクリエイターも少なくありません。サビも1回だけで十分、全て新しいパートで構成するなど、短い尺の中で多様な音楽表現を詰め込む手法も増えています。
実際、最近では作曲の依頼の段階で「TikTok用に展開予定なので短くて大丈夫です」というオーダーを受けることも増えています。
ビジネスモデルの変化と音楽の形
楽曲が短くなる背景には、ビジネス的な要因も存在します。ストリーミングサービスでは、1曲の再生が収益に直結します。そのため、短い楽曲であれば同じ時間内により多くの再生回数を獲得できる可能性があります。また、TikTokのような短尺コンテンツプラットフォームの隆盛も、楽曲の短縮化に拍車をかけています。
音楽を聴く場所がCDからストリーミングサービス、そしてTikTokへと移り変わる中で、楽曲の形も自ずと変化しているのです。しかし、これは決して新しい現象ではなく、メディアの変遷に合わせて音楽が形を変えてきた歴史の延長線上にあると言えるでしょう。
曲の長さが短いからといって価値が下がるわけではありません。むしろ、短い尺の中でいかに本質的な魅力を伝えるかという新たな挑戦が始まっているのかもしれません。2分台、3分台の楽曲には、無駄を省いた凝縮された音楽表現の魅力があります。
時代とともに音楽の形は変化しますが、その本質的な魅力は変わりません。今後も、メディア環境の変化に応じて音楽は新たな形を模索し続けるでしょう。短くなった楽曲の中に、現代の音楽文化の姿を見ることができるのです。