これはニュース読み配信の文字起こしをブログ化したものです。
驚異的な成長を遂げるQRコード決済
キャッシュレス推進協議会が先日発表したデータによると、PayPayをはじめとするQRコード決済の取引額が5年間で実に17倍に拡大し、18.7兆円に達したことが明らかになりました。2019年には1.1兆円だった市場規模が、わずか5年でこれほどまでに急成長を遂げたのです。
この急成長の背景には、自治体のポイント還元キャンペーンや、納税・公共料金支払いなど使用可能な場面の拡大が大きく貢献しています。現在では、PayPayをはじめ、d払い、au Pay、楽天ペイなど主要14社のQRコード決済サービスが市場を形成しています。これには各種小売店が独自展開するペイサービスなども含まれています。
飲食店やインターネットショッピングサイトでもPayPayが使える店舗が増加し、日常生活のあらゆる場面で利用できるようになりました。音楽専門のネットショップ「サウンドハウス」のように、クレジットカードと並ぶ主要決済方法として定着しつつあります。
個人間送金においても、飲み会の割り勘などでPayPayを使う人が増えており、以前は「使い方がわからない」という人も減少してきました。簡単な操作で送金できる利便性が広く認知され、日常的な決済手段として浸透しています。
ソフトバンク流 – 時代の先を読む戦略
PayPayの成功の裏には、ソフトバンクグループの戦略があります。PayPayの初期展開時には、驚異的な還元率のキャンペーンを実施し、瞬く間に市場シェアを拡大しました。
この戦略は、ソフトバンクの創業者である孫正義氏の「時代の先を読む力」の表れといえるでしょう。過去を振り返ると、2000年代初頭にはYahoo! BBを通じたブロードバンド革命、2010年前後にはiPhoneの日本導入などで同様の手法を展開しています。
Yahoo! BBの時代には、まだブロードバンドインターネットが一般的でなかった2001〜2002年頃、ADSLモデムを無料配布するなど大胆なキャンペーンを展開。「これからはブロードバンドの時代」という孫氏のビジョンは的中しました。
iPhoneについても、日本で初めてAppleと契約を結び、当時としては破格の条件で提供。「スマホの時代が来る」という見通しのもと、積極的な普及戦略を展開しました。見かけ上「無料」か「とても安い」という印象を与える販売方法は、実際には通信料で回収する仕組みでしたが、これがiPhoneの爆発的な普及につながりました。
未来を見据えるソフトバンクの次なる一手
ソフトバンクグループと孫正義氏の戦略の特徴は、「本気で普及させると決めたものは必ず日本で定着する」という点です。最初は懐疑的な意見も多いものの、過去20年を振り返ると、Yahoo! BB、iPhone、そしてPayPayと、この戦略は驚くほど的中しています。
では、孫氏が次に力を入れている分野は何か。それはAI(人工知能)です。現在、ソフトバンクユーザーには「Purple City」というAIサービスを1年間無料で提供するキャンペーンを展開し、国民のAI利用を促進しています。
また、半導体メーカーへの巨額投資も注目されています。AIの普及に伴い、半導体需要は今後さらに高まるという見通しのもと、NVIDIAなどの企業に投資し、その先見性は一部すでに成果を挙げています。さらに、OpenAIなどの生成AI企業にも積極的に資金を投入しています。
孫氏の驚異的な点は、実際にはソフトバンク自体に十分な資金がなくても、様々な資金源から資金を調達し、巨額の投資を実現する手腕にあります。彼が現在力を入れているAI分野が、15年後にどのような結果をもたらすのか、非常に興味深いところです。
PayPayをはじめとするQRコード決済の急成長は、ソフトバンクグループの戦略の成功を示す一例に過ぎません。今後も技術革新の最前線を走り続ける孫正義氏の次なる一手に、私たちは注目し続けるべきでしょう。