AI無断学習に2200億円!でも、本当の問題はもっと単純な話だった


これはスタエフの文字起こしをブログ化したものです


アメリカのAI企業「アンソロピック」が、作家3人から「著書を生成AIの学習に無断利用された」として訴えられていた裁判で、2200億円という巨額の和解金を支払うことで合意した、というニュースが飛び込んできました。著作権侵害訴訟としては過去最高額とのことで、その金額の大きさに驚かされます。

論点は「無断学習」ではなく「海賊版の利用」

このニュースを見て、「やっぱりAIが勝手に学習するのはダメなんだ」と思った方もいるかもしれません。しかし、今回の裁判の本当の論点は、そこではありません。

アンソロピック側も主張している通り、合法的に購入した書籍をAIが学習すること自体は、著作権侵害にはあたらない、というのが現在の法的な解釈です。日本もアメリカも、AIによる無断学習は基本的に認められています。

では、何が問題だったのか。それは、アンソロピックがAIの学習に使った50万冊もの書籍が、インターネット上の海賊版サイトから無料でダウンロードされたものだった、という点です。

人間もAIも、ダメなものはダメ

これは、非常にシンプルな話です。私たちが音楽を学ぶために、様々な楽曲を聴くのは自由です。しかし、その音源が違法ダウンロードされたものだったらどうでしょう。それは許される行為ではありませんよね。それと全く同じです。学ぶこと自体は良くても、その手段が違法であれば、人間であろうとAIであろうと、それはアウトなのです。

なぜ、アンソロピックほどの巨大企業が、わざわざ海賊版を使ったのか。普通に50万冊の書籍を購入すれば良かったのではないか。その点は非常に疑問ですが、今回の判決は「AIだから特別」なのではなく、「ダメなものは、誰がやってもダメ」という、ごく当たり前のルールを再確認させたに過ぎません。

「公開」されている以上、学習は避けられない

一方で、この問題は私たちクリエイターにとっても示唆に富んでいます。僕自身、音楽家として20年以上活動してきましたが、一度インターネット上に作品を発表した以上、それが誰かの目に触れ、学習の対象になることは、もはや避けられないと考えています。

「自分の作品をAIに学ばれたくない」と願うのであれば、もはやインターネット上に公開しない、という選択肢しか残されていないのかもしれません。

今回のアンソロピックの件は、AIと著作権を巡る議論の中でも、特に分かりやすい事例でした。AIだから許される、ということはなく、人間社会のルールが、そのままAIにも適用される。ただ、それだけのことなのです。