QUESTIONより
最近、ライブをスマホで撮影してはいけないというルールが呼びかけられていますが、撮影したものをSNSに上げて、バンドが広がるという利点もあると思いました。勿論、ライブは生が一番ですし、プロのカメラマンさんがいたりする場合は別ですが……。海外では、ルールも違うそうです。 彩雨さんとしては、ライブのスマホ撮影についてどう思いますか?
これについては、前に何度か提案したことがあるのですが、却下されてしまいましたね。
いろんな考え方があるので、撮影NGはそれはそれでアリと思ってます。
ライブを撮影されて不都合でもあるのか?
別に不都合はありません。インターネットで生中継もありますし、ライブビデオも何度も出してますしね。ただ、もし全員がスマホを持ってその画面越しにステージを見られると、こちらとしてはちょっと違和感があるかもしれませんね。
ディズニーランドでも、ワンスアポンアタイムとかパレードとか一生懸命に録画されている方もいますが、もちろんビデオカメラが趣味な方ならいいんですが、なぜ画面越しにずっとそれを見ているのか、ちょっともったいないような気がしています。
できればライブはコンテンツじゃなくショーとして楽しんでもらいたいので、現地まできてスマホ越しに見てほしくないなと思います。
とはいえ、ジャニコンなどでは双眼鏡でコンサートを見る文化もありますので、まぁ見たいように見てもらうのが一番なんですけどね。
ライブがSNSで拡散されるのが宣伝になるのか?
これはインターネットにおける究極の命題の一つです。たしかに宣伝になるのかもしれない、これについては否定はしません。また、そういう試みをしているアーティストがいてもいいと思ってますし、やっている先輩バンドがいるのも知っています。
ただ、自分もいろいろと国内外アーティストのYouTubeをちらほらと見たりもしますが、その中でいくつかファンの方がライブ中に撮影したものも見たことがあります。画面も揺れて、音もよくわからない、それで自分がもし初めてそこでそのアーティストの音楽に触れた時に、じゃあそのアーティストについていろいろ調べてみよう、音楽聞いてみようと思うほどの感動を得られるかというと、若干疑問があるのです。ディズニーランドの映像もそうですが、なぜかスマホで撮ると魅力が8割くらい下がるんですよね。もちろん、ファン同士の間では「いいなー」「いこうかなー」になる可能性もあるとは思いますが、8割魅力をカットされた映像がネット上に蔓延して、最終的にそれが本当に宣伝になるのかどうか、と思うわけです。
でも個人的にはライブ映像はふんだんにYouTubeにアップしていきたいと思っています。それがバンドの魅力を伝える一つの手段であることは十分に理解しています。
摩天楼オペラのライブを公式でアップしているもので、例えばこちらの末尾につけた仙台のライブ映像も意図的にYouTubeの視聴につけたものです。最近公式でアップしているライブ映像がありませんでしたからね。
懐かしの野音のライブ映像ですが、これも5分くらいに済ますこともできたのですが、長くライブ映像を見てほしい思いがありまして、尺をたっぷりとってもらいました。
どれもSNSでたくさん拡散してもらいたいという気持ちを込めて編集しています。
何が正解なのかわからない
若いときに、別バンドで無料音源の配布をしたことがあります。あのときはまだネットがここまで発達していなかった時期でしたからね。今は形を変えて、それがYouTubeへのMVアップなどになっているのでしょうか。
常に試行錯誤です。OrbのMVをアップするとき、中盤に撮影ドキュメントを入れました。YouTubeで音楽を聴く人が多いのもよくわかっています。ワンコーラスよりもどうせならフルコーラス聞かせたいと思って、こうしてもらいました。苦肉の策でした。今はワンコーラスのMVをアップしていますが、これについては、もはや何が正解なのかわかりません。ちなみに会場限定シングルでWARRIORを出したときは、会場に来てくれた人だけが最初に聞いてくれたらいいかなと思い、あえてYouTubeには視聴音源をアップしませんでした。
かっこいい音楽は15秒でも多少音質が悪くてもかっこいい、というのが自分の考えでもあるのですが、フルコーラスで聞いてほしいという気持ちもあり、すでに頭の中は矛盾しているのです。
たしかに海外はMVをフルでアップしていますよね。また、音源が丸ごとアップされていても、そのまま放置しているケースも多いです。日本が敏感なのか、海外が無頓着なのか、どちらがビジネス的に正解なのかは正直なところわかりません。
結局は、こういうのの考え方もアーティストが生理的に嫌がれば削除申請を出せばいいし、嫌がらなければ放置でいいのかなと、最終的な線引きはそこでいいのかなと思います。インターネットと音楽については、ビジネスモデル的にいえば、彩雨さんに言わせてみればまだ未来が見えるような活動をしているアーティストはいませんね。みんなこぞってジャブを打ってる段階です。これって最終的に音楽が今後どうなっていくかによると思います。市販用レコードが登場し、”音楽を売る”という概念が登場してからまだ100年ちょっとしかたってません。音楽の長い歴史の中では、まだカップラーメンを作るにも満たない時間です。
彩雨さんも、なにか面白い事できないか、音楽と未来の在り方については毎日考えています。
なにか面白いこと思いついたら必ず動くので、その時はみなさんのお力もお借りするかもしれません。そのときはよろしくお願いします。