前回に続きます。
前回はデジタル音楽の用語や仕組みを簡単に解説しました。
今回は、近年なにかと話題のロスレス配信についてです。
音楽配信はロスレスブームになる
予想通り、音楽配信はロスレスが主流になっていきました。
これはかねてから予測されていたことです。
その理由は、インターネットのインフラ整備が進んでいるからです。より高速でのやり取りが可能になっていることによります。
世界主要都市で4Gがサポートされ、さらには5Gがスタートしている現在、配信もそこそこの容量だろうと難なく通信できてしまうようになった、ということですね。
Spotifyもロスレス配信を発表していましたが、Appleもロスレス配信をすることを決定しました。
ロスレス音源というのは、非圧縮音源と技術的には同等の音質となっています。
つまりCDと理論上は同じ音質で配信を楽しめるようになるということです。
思わぬ落とし穴は、ワイヤレスイヤホン
ですが、このロスレス配信には注意点があります。
近年は音楽をワイヤレスイヤホンで楽しむ人が増えています。
このワイヤレスイヤホンですが、ロスレスで音楽を楽しむためには、それに対応したワイヤレスイヤホンを利用しなければなりません。
しかし、これが意外にもハードルが高いのです。
通常のイヤホンは、再生機器からアナログの音楽情報を電気に乗せて耳に届けます。ワイヤレスイヤホンは、再生機器からはデジタルの音楽情報を電波に乗せて耳付近のイヤホンに届け、そこでアナログの音楽情報に変換し耳に届けます。
一つクッションを置いてしまうんですよね。
仕組みとしてはどうにもならないものです。
そのため、このロスレス配信に対応しているワイヤレスイヤホンを使わなければなりません。
しかし、それがないんですよね。これも仕組み上仕方のないことではあるのですが。
APPLE純正のイヤホンですら、このロスレス配信には非対応となっています。
どのワイヤレスイヤホンを買えばいいのか
うっかりすると「やっぱりロスレスは音がいいよね」とか言いながら、聴いている音楽はワイヤレスイヤホンによって圧縮されたものになっているかもしれません。
じゃあ、いったいどのワイヤレスイヤホンを買えばいいのか。
説明書きにはだいたい「高音質」とか書いてありますから、さっぱりですよね。
見極めポイントは、Bluetoothのコーデック、と記載されている項目です。
ここがSBC、AACと表記されている場合、残念ながらロスレスを体験することはできません。
aptXと書いてあれば、ロスレスを体験することができます。さらにaptX HDとかaptX LLとあればCD以上の高音質を再生できますので、ハイレゾ音源でも再生可能です。(※あくまでスペック的な話で、実際にどうかは別問題です)
ただ、こちらはイヤホンだけではなく、再生端末も合わせて対応していることが重要です。
そしてここからが重要ですが、iPhoneは現時点でaptXに対応していません。つまり、iPhoneユーザーはどんなワイヤレスイヤホンを買っても、ロスレスを完全な形で体験することはできないということです。
身も蓋もない話です。
音質とは概念だ
じゃあiPhoneユーザーはどうしろという話なんですが、おとなしく有線イヤホンを使うか、もしくは外部機器でaptX対応の送信機を付けることにより、一応可能になります。
ただまぁ不便な思いをしてまでそれをやるかどうかは、もうその人が好きにした方がいい話でもありますからね。個人的には利便性を取りたいタイプです。
前回、今回と、いろいろ音質の話をしていますが、たしかにスペックに表すと、こちらの方が音がいい、とかそういう話ができます。
しかし実際に耳に流れる音質がそういった数値に置き換えられるかというと、そういうわけでもありません。
個人的には、あまりこういったスペックにみなさんが惑わされてほしくないなと思っています。
また、同じスペックであっても、その他の技術革新により音質も向上しています。MP3も今と昔とでは同じスペックであっても音は違いますし、ワイヤレスイヤホンも昔のものと比べ、同じ規格であっても今の方が音がいいように思えます。
スペックだけでは計り知れない要素はたくさんあり、音質の良し悪しというのは、そういった数値化されるものばかりではないのです。
そういった要因に惑わされることなく、好きに音楽を聴くのが一番だと考えています。