これはスタエフの文字起こしをブログ化したものです。
健康寿命が延びる現代社会において、私たちが直面する意外な健康課題の一つが「難聴」です。高齢者だけでなく若い世代にも広がりつつあるこの問題について、その原因と対策を探ります。
進む健康寿命と取り残される「耳」の健康
科学技術の発展により、私たちの健康寿命は着実に延びています。同じ80歳でも、50年前と現在では健康状態が全く異なります。栄養状態の改善、環境変化、医療技術の進歩などにより、現代の高齢者はかつてないほど元気で活動的です。
しかし興味深いことに、健康の中で「耳」だけは例外です。現代人の耳の機能は、昔の人々よりも低下する傾向にあるのです。その大きな要因として挙げられるのが、若い時からのイヤホン使用による聴覚への負担です。
1981年にソニーからウォークマンが登場し、イヤホンという新しい音楽の楽しみ方が広まりました。イヤホンによって、周囲に音を漏らすことなく自分だけで音楽を楽しめるようになったことは、音楽との関わり方において革命的な出来事でした。しかし、この利便性は耳への大きな負担という代償を伴っていたのです。
イヤホン文化がもたらす聴覚への影響
90年代から2000年代にかけて、音楽シーンでは重低音を重視する傾向が強まり、音圧も徐々に上がっていきました。それに伴い、多くの人がイヤホンで聴く音楽の音量も自然と大きくなっていきました。
一度の「爆音」で耳が悪くなるわけではありませんが、毎日のように大音量で音楽を聴き続けると、そのダメージは徐々に蓄積されていきます。現在40歳の人であれば、すでに約25年間イヤホンで音楽を聴き続けてきた計算になります。そのため、40代頃から聴力の低下が始まり、さらに大きな音で聴くようになるという悪循環に陥りがちです。
コロナ禍以降、イヤホンを常時装着する生活スタイルが増えたことも問題を深刻化させています。爆音による直接的なダメージだけでなく、耳が外気に触れない状態が続くことや、就寝中もイヤホンを装着するなど、耳の健康に悪影響を及ぼす習慣が広がっています。
耳を守るための新たな選択肢
このような問題に対する解決策の一つとして注目されているのが「オープンイヤー」タイプのイヤホンです。これは耳を塞がずに音楽を楽しめる設計になっており、外部の音も自然に聞こえるため安全性が高まります。
以前のオープンイヤーイヤホンは音漏れが激しく、音質も十分ではありませんでしたが、技術の進歩により音漏れを抑えながらピンポイントで音を届ける製品が登場してきています。これにより耳への圧迫感を減らし、外部の音も聞こえるため、例えば歩行中の安全性も確保できます。
五感の一つである「聴覚」を人工的に遮断することは、実は危険を伴います。ノイズキャンセリング機能で外部の音を完全に遮断すれば音楽はより美しく聴こえますが、特に外出時には危険が伴うこともあります。
もう一つの興味深い選択肢として、寝具に組み込む「枕用スピーカー」があります。これは骨伝導技術を応用したもので、寝返りを打っても痛くなく、耳を塞がずに音を楽しめるというメリットがあります。オーディオブックを聴きながら眠りにつくなど、新しい使い方が期待できます。
健康寿命が延びる現代社会において、耳の健康を保つことは非常に重要です。大音量での音楽鑑賞を控え、耳に優しいオーディオ機器を選ぶなど、日常生活の中で意識的に耳を守る習慣を身につけましょう。100歳時代を迎える私たちにとって、聴覚の健康は生活の質を大きく左右する要素なのです。