これはスタエフの文字起こしをブログ化したものです
今回は、パソコンと通信の新しい関係性を示す、非常に興味深いニュースについてお話ししたいと思います。日本HP(ヒューレット・パッカード)から、なんと「povo2.0」のeSIMを内蔵したノートパソコンが登場しました。これ、何がすごいかというと、購入すれば5年間で300GB分のデータ通信が追加料金なしでついてくる、という点です。
月額不要、買ってすぐネットに繋がる手軽さ
この発想、すごく新しくて面白いと思いませんか?つまり、パソコンを買ったその瞬間から、特別な契約や設定なしに、単体でインターネットに接続できてしまうということです。ユーザーはパソコン本体を購入して、povo2.0のアカウントを登録するだけ。Wi-Fiルーターを持ち歩く必要もなければ、スマートフォンのバッテリーを消費してテザリングをする手間もいりません。
もちろん、5年間で300GBというデータ容量が、多いのか少ないのかは使う人によります。単純計算すると1年で60GB、1ヶ月あたりだと5GB弱。動画をガンガン見るような使い方には向きませんが、外出先でメールをチェックしたり、ちょっとした調べ物をしたりするには十分かもしれません。それに、povoの面白いところは「トッピング」ができる点です。もし大きなデータ通信が必要になったら、その時だけ「データ使い放題(24時間)」といったオプションを追加すればいい。月額料金という概念を取っ払い、必要な時に必要な分だけ買うというスタイルが、このパソコンのコンセプトと見事にマッチしています。
ユーザーには見えない巧みな「囲い込み」戦略
しかし、この仕組み、手放しで「ユーザーにとって便利でお得!」とだけ言うのは、少し早いかもしれません。僕はこのニュースを聞いて、KDDI(povo)側の非常に巧みな戦略を感じました。
考えてみてください。SIMカードスロットを搭載したパソコンは昔からありました。でも、それだとユーザーはいつでも好きな通信会社に乗り換えられますよね。最初は楽天モバイルを使っていたけど、やっぱりソフトバンクにしよう、といったことが自由にできてしまいます。
ところが、この「povo入りPC」は違います。購入した時点で「5年間で300GB」という通信契約が、パソコンの代金に組み込まれているわけです。これはつまり、KDDI側がユーザーから5年分の通信料を「先払い」で受け取っているのと同じこと。ユーザー心理としては、「まだ300GBも残っているのに、今ここで別の通信会社に変えたら損だな」と感じてしまいますよね。
これは紛れもなく、一種の「囲い-込み」戦略です。しかし、それを「5年間300GB付き!」というお得感のあるパッケージに見せることで、ユーザーにネガティブな印象を与えずに契約させてしまう。この見せ方、povoはなかなか頭がいいなと感心してしまいました。
この流れは広がるか?今後の展開に注目
この「デバイス+通信の抱き合わせ」というビジネスモデル、アイデアとしては非常に面白いと思います。外出先でパソコンを使うシーンを考えると、カフェやホテルなど、今や多くの場所でフリーWi-Fiが使えます。常にモバイル通信が必要なわけではないことを考えれば、このくらいのデータ量でも案外やっていけるのかもしれません。テザリングの手間やスマホのバッテリー消費から解放されるメリットは、確かに魅力的です。
この動きに、他の通信会社が追随してくるかどうかも気になるところです。例えば、楽天モバイルあたりは、こういう新しい試みに積極的に乗ってきそうなイメージがありますよね。あるいは、格安SIMの会社がPCメーカーと組む、なんてこともあるかもしれません。
正直なところ、僕自身はMacBookとiPhoneの連携がスムーズなので、今のところテザリングで特に不便は感じていません。なので、Wi-Fi環境に飢えているかと言われると、そこまででもない。でも、この「povo入りノートPC」が示した新しい発想は、今後のデバイスのあり方を考える上で、一つの面白い方向性だと思います。この流れが他のデバイス、例えばiPadのようなタブレットにも広がっていくのか、注目していきたいです。