これはスタエフの文字起こしをブログ化したものです。
渋谷パルコにカセットテープ専門店ができるのだとか。実はカセットテープの人気って、15年くらい前からじわじわと高まってきてたんですよね。1982年にCDが登場して、90年代半ばになるとパソコンが普及して、音楽をデータとして保存する形が主流になっていきました。iPodの登場とインターネットの普及が決定的で、あとMDも90年代半ばは全盛期でしたよね。そうやってカセットテープは日常から少しずつ消えていって、2000年以降は日常的にカセットテープで音楽を聴く人はかなり少なくなっちゃったんじゃないかな。
「懐かしさ」から「新しさ」へ
でもね、カセットテープそのものの人気は根強く残ってるんですよ。レコードだって一般的には主流じゃなくなったけど、レコードショップはたくさんあるし、ファンもいますよね。カセットテープも同じで、昔の昭和文化のリバイバルみたいな形で人気が高まってるっていうニュースは、ぶっちゃけ15年くらい前からずっとあるんです。
でも、今2025年になって何が変わったかというと、カセットテープを知ってる世代にとっては「懐かしい」で終わっちゃうんですけど、知らない若い世代からすると、そもそも「懐かしい」という概念すらないんですよね。だから「懐かしい」を通り越して、「新しい」になってるところがあるんじゃないかな。
カセットテープって、正直めんどくさいんですよ。音も劣化するし、次の曲に行くのに早送りが必要だし、最初から聴きたかったら巻き戻しをしなきゃいけない。ランダム再生もできない。一方でデジタル音楽のいいところは、音が劣化しないことと、次の曲へのアクセスが簡単なこと。ボタン一つで次の曲に行けるし、ランダム再生だって簡単にできる。
音楽体験の本質を問い直す
でもね、「音楽を聴く」ってどういうことなんでしょうね。単に音の振動が耳に入って脳が理解するってことだけじゃないと思うんです。カセットテープを取り出して、入れて、巻き戻して、再生する。このめんどくさいところも含めての「音楽を聴く」という体験なんじゃないかって。
今のミュージシャンがやってることって、突き詰めれば「データを作る」ことなんですよね。ちょっとドライな言い方ですけど、事実としてそう。そのデータをCDにするか配信するかの違いでしかない。でも、音楽が人々の生活の中でどう位置づけられて、どう聴かれるのかまで考える「音楽体験」をデザインするミュージシャンがもっといてもいいんじゃないかな。僕自身も、ただデータを作って「聞いてください」って言うだけじゃなくて、皆さんの生活の中にどんな風に音楽があって、どんな風に聴くかっていうところまで考えていきたいです。
カセットテープがここで大ブームになるとは思わないですけどね。でも根強い人気が残り続けて、新しい世代には新しいアイテムになってきてる。音楽の楽しみ方が多様化するのはいいことだと思うので、こういう動きは歓迎ですね。渋谷パルコにカセットテープ専門店がオープンする、そんなニュースでした。