これはスタエフの文字起こしをブログ化したものです。
第1章:誤情報拡散の実態調査
総務省による最新の調査で、インターネットやSNSを通じて誤情報に接触した人のうち、実に4人に1人がその情報を拡散していることが明らかになりました。この数字は決して小さくなく、デジタル社会における情報リテラシーの課題を浮き彫りにしています。
ネット上では日々膨大な情報が流れており、誤った情報に接触することは避けられません。しかし、単に目にするだけでなく、確認もせずにそれを信じ、さらに拡散してしまう人が相当数いることは注目すべき点です。
調査によると、誤情報を拡散してしまう主な理由として「情報が驚きの内容だったため」が27%を占めています。また、ジャンル別では「医療・健康」「経済」「災害」の順に誤情報が多く拡散される傾向にあります。特に医療・健康分野では、ワクチンに関する誤情報などが多く見られることが示唆されています。
一方で興味深いのは、拡散された誤情報に気づいた経緯として「テレビ・新聞」が39.6%と最も多かった点です。これは従来型メディアが依然として情報検証の重要な役割を担っていることを示しています。総務省はこの結果を踏まえ、情報リテラシーに関するさらなる啓発が必要だという認識を示しています。
第2章:なぜ誤情報は拡散されやすいのか
SNS、特にX(旧Twitter)は「瞬発力勝負」のプラットフォームです。拡散を前提に設計されており、ユーザーは日常会話と同じように、驚きの情報に接すると即座に反応し、シェアしてしまう傾向があります。
実生活で「あの人とあの人が付き合っているんだって!」といった驚きの情報を聞いて「え~!」と反応するように、SNSでもセンセーショナルな情報に触れると、確認する前にリポスト(リツイート)ボタンを押してしまうのです。
これはSNS特有の問題というよりも、人間の本質に関わる問題です。センセーショナルな情報ほど拡散されやすいという傾向は、リアルな世界でも同様です。誰と誰が交際しているとか、離婚した、浮気した、不倫したといった情報は、人間の興味を強く引きます。
職場の噂話にしても、「実は誰と誰が付き合っていた」といった情報は特に人の関心を集めるものです。この情報の伝播力は人間の社会的本能に根ざしており、それ自体は自然な現象と言えるでしょう。
第3章:SNSが増幅する誤情報と対策の難しさ
SNSが従来の噂話と大きく異なるのは、情報が全国、さらには世界中に瞬時に拡散される点と、「いいね」や「リツイート」という形で数値化された反応が得られる点です。これにより自己顕示欲が満たされ、さらなる拡散行動を促進します。
リアルな噂話では、話を広めても自分に対して「いいね」はつきませんが、SNSではそれが可視化されます。多くの「いいね」を獲得することで満足感を得られるため、事実確認よりも早く拡散することが優先されがちです。
X(旧Twitter)のような「瞬発力勝負」のSNSでは、情報の真偽を確認している時間があれば、他の人に先を越されてしまいます。1秒でも早くリポストすることが重要となり、情報の吟味をしている余裕はないのです。
このような状況に対し、「リポストする前に情報の正確性を確認しましょう」といった啓発活動も行われていますが、人間の認知能力や習慣を短期間で変えることは難しいでしょう。筆者は「人類にSNSは早すぎる」と表現しており、人間の進化のペースよりもテクノロジーの発展が速すぎる現状を指摘しています。
対策としては、AIによるファクトチェックの活用が有効かもしれません。すべての投稿をAIがチェックし、誤情報だと判断されたものは拡散されにくくなるようアルゴリズムを調整することで、ユーザーの目に留まる情報が自然と検証済みのものになるという仕組みです。
情報社会が進展する中で、私たち一人ひとりが情報リテラシーを高めていくと同時に、テクノロジーを活用した仕組みづくりも重要になってくるでしょう。