「値上げしない宣言」はもう限界?デフレ思考から脱却し、インフレを受け入れる時代へ


これはスタエフの文字起こしをブログ化したものです。

「値上げしない宣言」が通用しない時代

さて、今日の話題ですが、最近の私たちの生活に直結する「値上げ」について少しお話ししたいと思います。

今、世の中のあらゆるものの値段が上がっていますよね。
この急激なインフレは、ある日突然始まったわけではありません。もともと経済において緩やかなインフレは自然であり理想的な状態なのですが、コロナ禍が大きな転換点になりました。

景気の悪化を防ぐため、世界中の国が市場に大量のお金(給付金や支援金など)を流しました。結果として経済は最悪の事態を免れましたが、市場にお金が溢れればインフレが起きるのは自然の摂理です。
2022年頃からそのインフレが急加速し、今年でもう4〜5年目になります。

世界的なインフレに加え、戦争や地政学的リスクによる原油高、そして日本特有の「歴史的な円安」。今の日本はまさにトリプルショックの状態で、モノの値段が上がるのは避けられない現実です。

サイゼリヤと楽天モバイルの苦悩

そんな中、数年前に「うちは値上げしません」と宣言して話題になった企業があります。

一つは、みんな大好き「サイゼリヤ」です。
私もサイゼリヤの理念が大好きです。「ワインを海外のように、100円でジュース感覚で楽しめるレストラン」というコンセプトで日本に広まり、本当に素晴らしい企業努力をしています。

しかし、あのインフレが加速し始めたタイミングでの「値上げしない宣言」には、私は当時から「悪手(あくしゅ)ではないか」と思っていました。
将来的にインフレが収まる保証がない中で、「絶対に値上げしない」と縛りを作ってしまうと、後々自分の首を絞めることになるからです。

実際、サイゼリヤは今でも奇跡的に価格を据え置いていますが、都心の1等地から店舗を撤退させたり、メニューの品数を減らしたり、原価率の悪いものを切り捨てたりと、身を削るような工夫と苦労を重ねてなんとか維持している状態です。

もう一つが「楽天モバイル」です。
後発として価格面で勝負するしかない楽天モバイルの三木谷社長も、これまで「値上げはしない」と強気の発言をしていました。

しかし、最近の決算発表(あるいは株主総会)の場で、これまでは必ず言っていた「値上げしない」という明言を初めて避けたそうです。
(※事実確認の補足:楽天モバイルは2024年以降、「最強プラン」の価格自体は維持しつつも、ポイント還元ルールの変更や、将来的な料金改定の可能性について三木谷氏が「インフレや他社の動向次第で柔軟に検討する」といった趣旨の発言をしており、「永遠に値上げしないとは言えなくなってきた」のが実情です。)

大手3キャリア(ドコモ・au・ソフトバンク)も実質的な値上げ(割引の縮小や新プランへの移行など)に舵を切りつつある中、楽天モバイルもいよいよ値上げの可能性が出てきたと噂されています。
これも、この強烈なインフレ下では「しょうがない、さすがにもう無理だ」という現実的な判断なのだと思います。

「値上げしない=美徳」というデフレマインドからの脱却

「うちは値上げしません!消費者の味方です!」という企業は、一見するとかっこいいですし、私たち消費者にとってもありがたい存在です。

しかし、原材料も人件費も上がっているのに値段だけを据え置くということは、どこかで誰かが無理をしているということです。
品質を下げるか、従業員の給料が上がらないか、身を削って心を病むか。そういう無理を強いてまで「値段を上げないこと」を美化する雰囲気は、日本人が長年染み付いてしまった「デフレマインド(昔の感覚)」であり、あまり良くないことだと思います。

本来、緩やかに値段が上がり、それに伴って給料も上がるのが健全な経済です。
しかし日本は「失われた数十年」でデフレを経験しすぎたため、「値段が上がることは悪いこと・おかしいこと」という感覚が根付いてしまいました。

今日、お昼にラーメンを食べたら960円でした。10年前なら同じラーメンが700円くらいだったはずです。コンビニのおにぎりも、昔は100円だったのが今は200円に迫る勢いですよね。
世の中のあらゆるものが1.5倍から2倍になっているのに、サイゼリヤだけが昔のままの値段でいることの方が、経済の仕組みとしては「異常(無理をしている)」なのです。

もちろん、企業努力で値段を抑えてくれることには感謝しつつも、私たち消費者は「値段が上がるのは自然なことであり、値上げを悪と決めつけるのはやめよう」という価値観に頭を切り替えていかなければならない時期に来ています。

株価がこれだけ上がり、物価も上がっている今、「来年にはインフレが収まって元の値段に戻る」なんてことはあり得ません。
持続可能な社会のために、企業が無理をせず適正な価格(値上げ)をつけることを、もっと前向きに受け止めていく必要があると感じました。

今日は「値上げしない宣言の限界」についてお話しさせていただきました。