こういった有事の際に必ずでてくる意見ではありますが、
「首相が無能すぎる!国民投票で首相を選ぶべきだ!」
という意見、今回のアベノマスク騒動の一件もあり増えてきた印象があります。
これを機に、大統領と首相の違い、そして日本を大統領制にすることは可能なのかどうかを一緒に考えてみましょう。
国の政治運営はやり方はいろいろ
国といっても、世の中にはたくさんの国があります。国はこうじゃなきゃいけない、という決まり事もないので、その運営のやり方もそれぞれです。
その国の歴史や、他国との関係性で運営のやり方を決めていくケースが多く、日本は明治維新のときに運営方針を変更しましたが、そのときはイギリスのやり方を参考にしています。
中には宗教上の神をトップにして政治を行う国もありますが、ここではそれは除外し、いくつかのパターンに分けて紹介していきたいなと思います。
大統領がみんなのリーダー!アメリカスタイル
アメリカは歴史上、誰か神様や王様が作った国ではありません。植民地が独立してできた国です。
植民地ということでいろいろな人種や考え方、宗教があるわけですが、それを束ね独立戦争を起こすのだから、強いリーダーシップが必要になります。
その考え方は今でも残っているので、アメリカ大統領は強いリーダーシップが必要で、なおかつルール上もその強いリーダーシップが発揮されやすいものとなっています。
ですが、日本と同じようにアメリカにも議会があります。だから、議員さんがいるわけです。そのあたりどう日本と違うの?と疑問を持たれる方も多いでしょう。
日本は、行政(内閣)と立法(議会)がどこかセットのような関係性になっています。行政のトップは国会議員ですので、立法にも参加しているわけです。
アメリカは行政と立法がわけられているので、議会で決めた新しい法律ができました〜!っていったところで、大統領がダメ!っていうこともできます。ここがアメリカ大統領のすごいところです。(ちなみに、ダメといっても議会で再審議となって3分の2以上の賛成で再び可決すれば大統領といえど拒否できません)
さらに大統領令といって、議会を通さずに大統領が新しいルールを作ることができます。
そしてもう一つ、議会といえど大統領をクビにすることができません。まぁ弾劾裁判はありますけど、これは長くなるのでまたいつか。
要するに、全体的に大統領が強いリーダーシップを発揮できる仕組みとなっているわけですね。
みんなで決めよう!日本やイギリススタイル
では日本はどうかというと、日本は先述の通りイギリスの政治の仕組みを参考にしています。
イギリスも日本の皇室のような王室もありますし、参考にするには結果的にもちょうどいいのかなと思います。皇室の話についてはまた今度。
大統領がいないわけですが、首相が国のトップになります。
アメリカと違うのは、トップの決め方です。首相は議員の中から決める仕組みです。このことについて、自分たちのリーダーを自分たちで決めるべきだ!勝手に決めるな!と怒る人がいますが、まぁ聞いてください。
日本の場合は行政のトップである総理大臣と、法律などを決める議会がセットになっています。なので総理大臣も国会に参加しています。では総理大臣が議決を取るときに他の国会議員よりもたくさん投票できるかとかあるかというと、ないですよね。みんな一票です。
また、そのトップを議会が引きずり落とすこともできます。それが日本で言うところの内閣不信任案です。
このように、日本では立法と行政の関係性が密接で、どこかセットになっているようなものです。議員についてはルールに則って国民が選んだ人たちですので、その人たちでトップを決めて国全体を運営していこう、という感じで、たしかに直接トップを国民投票で決めているわけではないものの、民意の反映はされています。そして誰かが急に独裁的なことをしにくいような仕組みです。
よく三権分立といって立法、行政、司法のバランスなんて学校で習った人もいるでしょうが、厳密に言うと日本やイギリスは三権分立ができていないのでは、という考え方もありますね。
でもそのかわり、立法と行政がねじれることはありません。なのでスムーズな政治を行うことができます。
権力集中!中国や北朝鮮スタイル
先程三権分立の話をしましたが、この三権分立というのも、どこかが暴走しておかしなことにならないように、行政、立法、司法という大事なところを3つに分けていい感じのパワーバランスでやっていこう、という話です。
とはいえ、全部の国がこういう仕組みではありません。
例えば中国や北朝鮮は、権力を集中させた民主集中制という仕組みを導入しています。中国を例にして説明すると、全てのことは全国人民代表大会という会議で決まります。その会議には日本のようにいろいろな考え方のある複数の党が参加するわけではなく、中国共産党という一つの党だけで行われます。
つまり、全てのことは中国共産党が決めていくわけで、そのトップにいる人が一番権力があるという形です。
ちなみに余談ですが、中国のトップは習近平氏ですね。役職は中国最高指導者、というものですが、中国共産党の総書記でもあります。総書記がその党で一番偉い役職です。
では北朝鮮のトップは金正恩氏です。では総書記かというと、違います。金正日氏が亡くなられたときに、金正日を「永遠の総書記」という位置づけにするために、総書記にはならず、新しい最高職を作りそれに就いている形になります。
権力集中ということでどこか独裁的な悪い印象を持つ方もいるかもしれませんが、なにかあったときはスピーディに対応できますし、ちょっと無茶で強引な政策もできますし、メリットもあるのです。
ちょい例外、大統領と首相のいる韓国やドイツスタイル
ちなみに例外ですが、韓国やドイツなど、大統領と首相の両方がいる国もけっこうあります。
みなさん、韓国の大統領の名前は当然言えますよね。ムン・ジェイン氏です。
では韓国の首相の名前は言えますか?自分もパッとでてきません。これは、同じ首相でも日本と少し違って、どちらかというと内務のトップであり、国のトップではないのです。韓国の場合はしっかり大統領に権限が集まり、大統領と首相の両方があれど、しっかりと大統領制になっています。
では同じく、ドイツの首相の名前は言えますか?もちろん言えなきゃダメです。メルケル氏です。
じゃあ大統領の名前を言えますか?いやー、日本人でこれ即答できる人、いるんですかね。
昔のドイツは大統領に強い権限がある国で、ヒトラーも首相であり大統領でありました。しかし戦後はルールを変えて、大統領と首相をしっかり権限を分けるようになりました。
あくまで名目上の国のトップは大統領なんですけど、大統領は議会の中から選ばれて、首相を任命するなど、トップっぽいことをします。でもそれはあくまで形式上の話で、やはり国のトップは首相になります。
なので、大統領と首相が両立している国はちょいちょいありますが、そのやり方は国によってさまざまなということです。
日本は大統領制が可能なのか?皇室との関係は?
では日本で大統領制を行うことは可能なのでしょうか。その場合、皇室との関係はどうなるのでしょうか?
いやー、もうびっくり3000字に迫ってきました。さすがに長くなりすぎた!
なので、これについてはまた別でお話することにしましょう!