プロンプトで世界を作れる?VR×AIの可能性


これはスタエフの文字起こしをブログ化したものです

GoogleのAI研究開発組織「DeepMind」が、また一つ、未来を大きく変えうる技術を発表しました。その名も「Genie 3(ジェニースリー)」。これは、プロンプトと呼ばれる指示文や画像から、インタラクティブな3Dのバーチャル空間を丸ごと生成してしまうという、とんでもない大規模世界モデルです。

平たく言えば、これまで私たちが触れてきた「AIイラスト」や「AI動画」の、3D空間版だと考えれば分かりやすいでしょう。テキストで「夕暮れの海岸、穏やかな波、遠くに灯台が見える」と入力すれば、その通りの世界が3Dで立ち上がり、その中を自由に歩き回れるようになる。そんな時代が、もうすぐそこまで来ています。

かつての挫折と、AIがもたらす新たな希望

このニュースを聞いて、僕は数年前に味わった、ある挫折を思い出しました。4年ほど前になりますが、「アヤメタ散歩」という、メタバース空間でファンの方々と一緒に散歩や記念撮影を楽しむという企画をやったことがあります。それはそれで非常に楽しい体験だったのですが、その準備段階で、僕はVR空間を自らの手で創り出すことの難しさに直面しました。

専用のソフトを使い、自分の思い描く世界を構築しようと試みたものの、あまりにも専門性が高く、僕のスキルでは到底太刀打ちできなかったのです。「もっと自由に、自分の頭の中にある世界を形にできたら、どれだけ楽しいだろう」。その時の悔しさと憧れは、今でも鮮明に覚えています。

しかし、この「Genie 3」の登場は、そんな僕のかつての夢を、いとも簡単に叶えてくれるかもしれません。専門知識がなくても、言葉を紡ぐだけで世界が生まれる。これは、クリエイターにとってまさに革命的な出来事です。

物語の世界を「体験」する、新しいエンターテイメント

この技術が一般に開放されたら、創作の可能性は無限に広がります。例えば、僕が書いた小説『レガーレ』の物語を丸ごとGenie 3に読み込ませて、「この世界をVR空間で表現してほしい」とお願いしたらどうなるでしょう。

物語の朗読やBGMが流れる中、読者は主人公が歩いた道を自らの足で辿り、物語の舞台となった街並みや風景を360度見渡すことができる。それはもはや「読む」のではなく、物語の世界を「体験」する、全く新しいエンターテイメントの形です。生成された空間を録画して、ミュージックビデオのような映像作品に仕上げる、なんてことも可能になるでしょう。

VR普及の起爆剤となるか?

VRやARといった技術は、「これから来る」と言われ続けて久しいですが、正直なところ、まだ一般に普及しているとは言えません。僕もVRヘッドセットを持っていますが、その理由もなんとなく分かります。デバイスの扱いにくさもさることながら、やはり魅力的なコンテンツがまだまだ少ないのです。そして、そのコンテンツを作る側に、あまりにも高いハードルがある。

しかし、Genie 3のように、誰もが簡単に、そして低コストでハイクオリティなVR空間を創れるようになれば、状況は一変するはずです。クリエイターの参入障壁が下がることで、多種多様なVRコンテンツが爆発的に生まれ、それがVRデバイスそのものの普及を後押しする。そんな好循環が生まれる可能性を、僕は大いに期待しています。

まだ一般公開はされていませんが、このGenie 3が誰でも自由に使えるようになった日には、ぜひ真っ先に試してみたい。そして、かつて夢見た「自分の世界を創る」という挑戦に、今度こそリベンジしたいと思っています。