これはスタエフの文字起こしをブログ化したものです
この話、実は僕が京都の授業でいつも熱弁している、めちゃくちゃ重要で面白いテーマなんです。最新の研究で「赤ちゃんの泣き声には、性別に関係なく誰もが強く反応する」ってことが分かってきたんですが、その理由を掘り下げていくと、僕ら人類の壮大な歴史が見えてくるんですよ。
ある研究では、人に赤ちゃんの泣き声、大人の泣き声、動物の苦しそうな声などを聞かせて脳の反応を比べたところ、圧倒的に赤ちゃんの泣き声に強く反応したそうです。さらに最新の研究では、赤ちゃんの「苦しんでいる泣き声」は、物理的に普通の泣き声とは違う音響特性を持っていて、聞く人の緊張感を高める作用があることも分かってきました。
そして大事なのが、この反応に男女差はないということ。よく「母親の方が赤ちゃんの声に敏感だ」と思われがちですが、それは生物学的な差ではなく、単純に女性の方が赤ちゃんのお世話をする時間が長いという「社会的な役割」によるもの。僕らの脳の基本的なプログラムは、男も女も関係ないんです。
じゃあ、なぜ僕らはこんなにも赤ちゃんの声に反応するようにできているんでしょうか?
僕らの祖先、ホモ・サピエンスの「生き残り戦略」
その答えは、僕らが「ホモ・サピエンス」だからです。 僕らホモ・サピエンスって、実はそんなに体のスペックは高くない。ネアンデルタール人の方が体は大きくて力も強く、頭も良かったとさえ言われています。じゃあ、なんで僕らが生き残ったのか。それは、僕らが他のどの種よりも「社会を形成する」能力に長けていたからです。
僕ら人類は、大きな脳を持つために二足歩行を選びましたが、そのせいで産道が狭くなり、赤ちゃんを非常に未熟な状態で産まなくてはならなくなりました。他の動物みたいに、生まれてすぐに立ち上がるなんてことはできません。
原子時代、そんな無力な赤ちゃんをたった一人や二人で育てるのは、外敵に襲われるリスクも高く、非常に困難でした。だからこそ、僕らの祖先は「社会」を作り、みんなで子どもを育て、守るという戦略をとったんです。
社会全体で子孫を残していくためには、誰の子どもであろうと、子どもが危険な状態にあれば、すぐに気づいて助けに行かなければなりません。そのための最強のアラームが、赤ちゃんの「泣き声」だったわけです。
だから僕らの脳は、赤ちゃんの泣き声を聞くと、それがどこにいて、どんな状況なのかを最優先で察知するようにプログラムされているんです。電車の中で赤ちゃんが泣いていて、うるさいな…と感じてしまった時、ちょっと思い出してみてください。「あぁ、自分も、この赤ちゃんも、ホモ・サピエンスなんだな」って。そうやって僕らは種をつないできたんです。
最終的な結論。僕らは「脳」で音を聴いている
この赤ちゃんの泣き声の話が教えてくれる、もう一つの重要なことがあります。それは、**「僕らは耳で音を聴いているようで、実は脳で聴いている」**ということです。
耳はあくまで、音のデータを脳に送るためのマイクのような器官にすぎません。その音を「赤ちゃんの泣き声だ」「危険だ」と判断し、体を反応させているのは、全て「脳」の働きです。
この感覚は、音楽を理解する上でもすごく大事なこと。僕らは耳で音楽を聴いているんじゃなく、脳で音楽を聴いているんです。この視点を持つと、いろんなことの辻褄が合ってくるようになります。人間って、本当によくできた生き物ですよね。
もし興味がある方は、僕がAmazonで出している『ITの音楽史』みたいな本にも、確かそんな話を書いた気がするので、ぜひ読んでみてください(書いてなかったらごめんなさい!)。